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2007年 02月 02日

デサフィナード訴訟を考える

ジャスラックが訴えた生演奏の店、「著作権侵害せず」とネット中継で証明するも…「将来するかも」とピアノ撤去&賠償命令
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/911139.html
 「痛いニュース」で取り上げられていたので、著作権について珍しく、ブログで意見を書いてみる。
 全体的に、ジャスラックと大阪地裁とを叩く論調だったが、「痛いニュース」コメントの「505」で、判決文を紹介し、「これ読むと、デサフィナード側が最初JASRAC管理曲は演ってない、と言ってたのに、その後JASRACに証拠を突きつけられてしまい、その後証言を変えてしまった結果当初の主張と食い違ったり、かなり裁判長の心証を悪くしたのが分かる」という指摘があった。この部分が、自分がこの記事を書くきっかけとなっている。
 そこで、自分なりに判決文を検証してみた。裁判所の判断部分を斜め読みしただけのレベルだが、読んだ限り、裁判所の判断は、それなりに筋は通っていた。以下、必要な箇所を適宜引用(太字部分)してコメントする(著作権侵害とか言うなよ、日本の著作権法じゃ、判決書には著作権ないからな(著作権法13条))。

平成19年1月30日判決言渡
平成17年(ワ)第10324号著作権侵害差止等請求事件
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070131152830.pdf

【60~61p】
被告は,平成17年2月23日の本件仮処分事件の審尋期日において,本案訴訟による解決がなされるまでの間,本件店舗では管理著作物を演奏しないことを表明したが,これも本件の終局判決が言い渡されるまでの間の措置として管理著作物を演奏しない旨を表明しているにすぎないものであることが,その主張の趣旨に照らし明らかであり,その後の対応については態度を明らかにしていない。
そして,かかる意見表明後も,ライブにおいて主催者が原告から管理著作物の利用許諾を得ているか否かを書面で確認することもせず,被告自身が管理著作物であるか否かを判断することもできない中で(被告自身がこのことを認める供述をしている。被告本人供述),本件店舗におけるライブ演奏において,管理著作物が演奏され続けているものである。
これらの状況に加えて,原告の管理著作物である日本国内外の楽曲は,原告によれば460万曲以上にも及ぶこと(甲18)からすると,被告は,将来においてなお本件店舗において管理著作物を演奏するおそれがあるというべきである。
被告は,現在,ライブ主催者が原告から管理著作物の利用許諾を得ようとしても原告が不当に拒否するため,結局ライブを開催することができず,その他のピアノ演奏も中止しているから,管理著作物の使用の差止めを命ずる必要性はないと主張するが,現にライブ演奏による著作権侵害行為は継続しており,ピアノ演奏も暫定的に中止しているにすぎないから,上記差止めの必要性は優に認められる。
したがって,請求の趣旨第1項については,本件店舗における「ピアノリクエスト・ピアノ弾き語り・ピアノBGM」における演奏,入場料を徴収する「ライブ」における演奏について,ピアノ,ウッドベース,ドラムセット,パーカッション,ギター,ベース等の楽器演奏及び歌唱による管理著作物の使用差止めの請求は,理由がある。


 ここが、「将来的にも著作権侵害行為を続ける恐れがある」と報道された部分と思われる。ピアノ撤去自体は、62~63pで、論じられている。とにかく、「現にライブ演奏による著作権侵害行為は継続しており,ピアノ演奏も暫定的に中止しているにすぎない」という部分が、判断の核心のようだ。

【59~60p】
また,被告は,平成17年5月20日ころ,本件店舗内にインターネット対応の音声付き監視カメラを設置し,その上で,原告に対してそのユーザー名及びパスワード等を開示し,原告が本件店舗内でのステージ演奏の様子を見ることができるようにした。
被告は,本件仮処分事件の平成17年2月23日の審尋期日に,本件店舗における演奏に管理著作物を使用しないと述べていたが,その後,ライブの出演者等が原告から管理著作物の利用許諾を得たことを書面で確認するなどの措置は執っておらず,演奏された楽曲が管理著作物であるか否かも十分に調査してはいなかった。
被告は,平成17年2月23日以降,ピアノリクエストを中止し,その後,ピアノ弾き語り,ピアノBGMも中止した。被告は,本案訴訟による解決がなされるまでの間,本件店舗において管理著作物は演奏しないという意思を表明し,本件仮処分事件以降の各手続を通じてそれを根拠に保全の必要性がないと主張してきたが,前記認定のとおり,プロ歌手によるライブは引き続き開催し,その際には管理著作物の演奏もなされている。


 ネット中継の部分は、おそらくここ。
 侵害の有無の判断を(本来ならば、被告側が権利処理をとりまとめて、ジャスラックに許諾を得なければならないところ、)侵害の判断をジャスラックに丸投げしているところが、裁判所にとって問題視されているようだ。確かに、ジャスラックは許諾を与えたいのに、「侵害していたら言ってください」という被告の態度には、問題がある(「許諾を与えること」と「侵害を指摘すること」は、別の問題であることに注意。許諾を求めるのが筋)。
 確かに「505」が指摘するように、「これ読むと、デサフィナード側が最初JASRAC管理曲は演ってない、と言ってたのに、その後JASRACに証拠を突きつけられてしまい、その後証言を変えてしまった結果当初の主張と食い違ったり、かなり裁判長の心証を悪くしたのが分かる」という部分が、よくわかる認定になっている。だから、裁判所の判断も、それなりには理由がありそうだ。

 なお裁判所は、こんな判断もしている。

【56p】
したがって,貸切営業における演奏については,管理著作物の利用主体は本件店舗の経営者たる被告であると認めることはできない。
(4) 小括
以上によれば,本件店舗におけるピアノ演奏及びライブ演奏については,被告が演奏の主体であることから,被告による演奏権侵害の余地がある。
また,証拠(甲53,56ないし59,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件店舗において,平成18年4月29日に行われた結婚披露宴の二次会,同年6月18日に行われた「サッカーワールドカップ第2回観戦会」,同月23日に行われたバンド発表会,同年7月1日に行われたピアノ教室発表会,同月16日に行われた結婚披露宴の二次会は,いずれも貸切営業であると認められ,上記(3)のとおり,貸切営業における管理著作物の利用主体は被告とは認められないから,これらの営業における管理著作物の演奏は,被告による管理著作物の著作権侵害行為には該当しない。


 ここは、法的にはかなり重要な判断で、貸し切り営業とそれ以外の営業とを区別して、貸し切り営業については、「店は責任主体ではない」という形で、賠償の範囲を限定している。
 つまり、裁判所も、ジャスラックの言い分を一方的に認めているわけではないと言うこと。

 以上、つらつら引用してきた上で、とりまとめると、この判決を受け入れるか受け入れられないかは、下記の通り。
 そもそも、この判決は、差し止め(と、その手段としてのピアノ撤去)訴訟である。
 したがって、いままでの事実認定にしたがって、“確定的でない将来の危険性”を判断しなければならない。そこで裁判所は、上記のとおり“現在進行形で著作権侵害が行われている”と認定し、“確定的でない将来の危険性”を判断した。
 果たして、34p以下の演奏事実を持って、“現在進行形で著作権侵害が行われている”と認定し、“確定的でない将来の危険性”を判断することを、受け入れるのか? 受け入れないのか? それがまさに問題となっているのだろう。……個人的には、現行法に従えば、本件の演奏事実をすれば、裁判所のように判断するしかないようにも思われる。
 読者のみなさんは、どう考えますでしょうか? いえね。自分も、「痛いニュース」のコメントの論調(要は、叩き方)は、間違っているとは思うんですが、判決書の判断が果たして、(理屈の筋道は通っているとしても)妥当だったのか? ということに関しては、自信がないので、この記事を通して、ほかの方々にも検証して貰いたいんですよ。

 ただ、どちらにしても、コメントの直情的条件反射的な、裁判所叩きの論調には、同調できないことは、指摘できたとは思っている。
 なお、ちなみに、田中俊次裁判長の判決で、同じく、正露丸判決が叩かれている。「痛いニュース」コメントでも取り上げられているのだが。

http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/747134.html

 コメントを読んでいると、直情的条件反射的な、裁判所叩きの論調(「どうみても類似している」「大幸薬品カワイソス」)になっているが、これも、判決書を良く読んでみると、誤読(というか、そもそも読んでいないこと)が、よくわかる。本家の2chレス「203」以下を見ればわかるのだが、そもそもこの判決は、「ラッパのマーク部分でしか、各社の区別はできない」という判断をしているに過ぎない。ほかの部分は、「正露丸」と呼ばれていた商品が、昔から使っていた色であったり、デザインであったりして、そもそも、各社商品を区別できる部分は、ラッパのマークの部分にしか見いだせないという判断をしている。

 簡単に言ってしまえば、「むしろ(後発業者である)大幸薬品が、デザインを独占しようとしている」のだ。

 いままで、ずっと、各社共通のデザインを使用していたにもかかわらず、だ(だからこそ裁判所は、各社で共通していないラッパのマークの部分が、区別の核心としている)。
 こちらの判決は、最終的には、裁判所の判断が正しいということで落ち着いている。
 この判決のように、今回の判決についても、読者が、冷静な判断を下せることを、心より願いたい。
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by hiduka | 2007-02-02 04:35 | 著作権